医理工学際連携コースでは次の視点から未来医療に向けたプロジェクトを進めていきます。
①病気を知る その1 (生物科学、ナノバイオサイエンスの視点から)
分子遺伝学、分子細胞生物学、微生物学等の視点から病態の発症や進行のメカニズムを解明します。特に今後ますます増加する生活習慣病、加齢性疾患、脳神経関連疾患の病態解明は重要です。また変異タンパク質に起因する分子・電子レベルでの機能不全も病気の原因となり、ナノバイオサイエンスからの視点も疾患発症メカニズム解明や治療標的の開発につながります。
②病気を知る その2 (ビッグ・データ解析から)
近年、分子遺伝学的解析手法が飛躍的に発展し、病気の発症や進行に関係する様々なゲノム情報だけでなく、ゲノム上の遺伝子から転写されるmRNAやそこから翻訳されるタンパク質の網羅的かつ多大な情報が蓄積されています。これらの疾患に関するビッグ・データを解析することで、病態の発症や進行のメカニズムをコンピュータ上で紐解き、病気や感染症の進行や広がりを予測できる可能性があります。
③病気を発見する(バイオセンサー、バイオイメージング、ナノデバイス 等)
病態の原因となる細胞を同定したり、その細胞の中の分子の変化を明らかにできれば、それは病気の早期治療や予防につながります。このようなことを実現できるのがナノデバイスやバイオセンシング技術でしょう。本コース内では、ナノデバイスによって、血液中を流れるがん細胞をいち早く捉える試みがなされています。また生体内のタンパク質や核酸等の高分子の活性や動態を固有のイオンや電荷の振る舞いととらえるバイオセンシング技術や機械学習によって、病態と直結する変化を非侵襲的に発見していくことを目指しています。超高齢者人口が増加する昨今では非侵襲性も重要な要素となります。
④病気を治す その1 (ドラッグデリバリーシステム 等)
近年、疾患の原因分子が同定され、それを標的とする分子標的薬が次々と開発されています。しかし、標的臓器や標的細胞を狙った投与法は、未だ十分とは言えません。副作用を軽減し、最大限の薬効をもたらすために、各病態に最適なドラッグデリバリーシステムを開発することが求められています。
⑤病気を治す その2(再生医療、人工臓器 等)
病気によっていったん正常な臓器機能を失っても、培養技術によって機能細胞や組織を作製し、それを体に戻して機能回復を図る再生医療が近年飛躍的に発達してきています。iPS細胞の利用だけでなく、近年は各組織に存在する組織幹細胞の利用も研究が進んでいます。しかし、完全な再生臓器の作製は未だ開発途上であり、すべての再生臓器が培養で作製できるかどうかは未知です。したがって生きた細胞だけでなく、人工臓器の開発や両者の併用も必要になると予想されます。
⑥患者の苦痛を軽減する(医療ロボティクス、介護ツール、人工臓器 等)
超高齢社会が進行している日本では、様々な生体能力が低下した高齢者の生活をいかにサポートするかが大きな問題になっています。また高齢者だけでなく、心血管性疾患など、高齢に達していなくても日常生活に支障がでる病気もあります。そのような患者の苦痛を軽減し、そして平常に近い能力に戻すことを可能にする医療機器の開発は欠かせません。
⑦健康モニタリング(健康モニタリングツール、医療ビッグデータ解析 等)
個別医療のひとつとして全身の健康モニタリングを行うことは、病気の早期発見や再発予防につながり、また医療費の削減にもつながります。今後ますます個々人の医療データ解析による健康モニタリングの必要性が高まると考えられます。