デジタルトランスフォーメーションとは、情報技術と現実を結びつけ、融合を進めていくとともに、その過程で変化を引き起こすことを意味します。情報化社会変革に必要な理論・処理系・応用について、統一的に研究教育を進め、各ドメインに特化した効率的で効果的なアプローチを実現できる能力を身に付け、ブレイクスルーをもたらすオリジナルなアプローチに基づく研究を推進し、その研究成果を社会に還元する人材の育成を目的とする研究教育コースです。

本コースでは、所属学生と教員が一体となって、情報技術と現実を結びつけ、融合を進めていくとともに、その過程でブレイクスルーにつながる変化を引き起すことを目的としています。所属学生は、各分野の専門家の指導をとおして、データサイエンス、人工知能、その他の最先端の情報技術とそれらを支える理論について理解を深めるとともに、最前線で情報技術を応用している企業でのフィールドワークをとおして、実践力を身に付けます。

■デジタルトランスフォーメーションへの道しるべ

デジタルトランスフォーメーションが扱う課題には、情報化社会をより便利で効率的なものにするために、人とコンピュータの関係を深化させることが含まれます。この関係の深化を目的とした研究には、コンピュータを人に近いものにする人工知能の研究や、コンピュータをより直感的に扱えるようにするユーザインタフェースの研究があります。これらの研究を例に、デジタルトランスフォーメーションコースが目指すブレイクスルーとは何か、その一部を紹介します。

■数理的基盤の進化

機械学習を含む人工知能は、統計的AIと記号的AIに大別することができます。統計的AIは、過去のサンプルからそれらしい結果を生成するシステムを作成し、新しい問題に対して結果を予測します。記号的AIは、過去のサンプルと結果の関係に理屈を与え、新しい問題を、その理屈に則って解決します。統計的AIは、その一つであるディープラーニングがそうであるように、脳の神経細胞や生物の振舞いを模したものが多く、その仕組みはよくわからないブラックボックスであることがほとんどです。一旦、統計的AIが予想と異なる結果を生じると、そのブラックボックスから理由を知ることは困難なので、結果の妥当性を検証しなければなりません。この検証には、統計学が重要になってきます。また、統計的AIをブラックボックスにしている要因の一つに、生物的な不確定な振舞いがありますが、この不確定部分を組合せ論によって定式化する試みもなされています。一方、記号的AIは、古典論理に基づいているものがほとんどですが、より普遍的な論理に向けて、トポス圏論的論理などの研究が試みられています。

■並列分散処理

記号的AIは、統計的AIと違い、結果の理由が理屈として示される安心安全な人工知能とも言えます。その一方で、並列処理によって大量のデータを扱える統計的AIに比べ、処理の複雑さから並列処理が難しく、大量のデータを扱えないという問題がありました。この問題に対して、記号的AIをクラウド上で分散処理することによって、大量のデータを扱えるようにする試みがなされています。

ARVR

コンピュータ上の表示形式としてAR(拡張現実)やVR(仮想現実)が注目されていますが、ただリアルな表示形式としてだけではなく、CGで表した命令を、手でつなぎ合わせるようにしてプログラミングを可能にしたり、視線とAR/VRを組み合わせることによって、手を使わずにデスクトップの操作を可能にするユーザインタフェースの研究などが試みられています。

■ゲームの理論と開発

人工知能やユーザインタフェースを含む情報科学の総合技術の先端的な応用の一つはゲームです。さらに、多くのオンラインゲームは、ユーザの大量な情報を集め、数理的に分析することによって、ゲームの質へのフィードバックを行っています。ゲームの理論と開発は、情報科学のブレイクスルーについて、多くのヒントを含んでいます。

 

デジタルトランスフォーメーションコースに参加して、コース教員とともに、情報化社会の未来を切り開きませんか。株式会社Cygamesの協力による実践的なフィールドワークを含めた本コースでしか学べない横断的な授業や研究を通して、所属専攻科以外の専門知識を幅広く学ぶことができます。また、研究発表会を兼ねた交流会を実施し、学生・教員ともに連携と融合を促進していきます。